共通語化されて無い言葉について
歴史を追う作業は少しだけお休みを戴きとう御座います。
出来事は浮かんでくるのですが、肝心の時間軸その他が
明快に観えない様な有様。過去を捏造する恐れも御座い
ますので。
暫し今回の件で思いました事をつらつらと記させて戴きたく
存じます。
先ず伊藤さんとやり取りさせて戴いて思った事は『共有出来る
言葉の確立』でした。あっさり申し上げている様に見えますが、
実はそうそう身軽に実行できる作業ではありません。
腐女子と言う言葉は明確な出自がいまだ確定されてい無い*1言葉で
あります。腐女子を内包するやおいと言う言葉も出自に一応の
定説*2はあるものの、いまだ新説なるもの*3が散見され
時に紛糾している状態です。
その状況だけでも知っていて下されば、共有できる言葉の
確立の難度を推測して戴けるかと思います。
研究者・評論家の方にとって、現状はかなり不幸なもので
あると思われます。言葉はあるものの、その根拠を明快に
示した文献が時に行方知れずになっているのは歯痒い事で
しょう。
唯一の公的な情報掲載と言って良かった『現代用語の基礎
知識』に於けるやおいの簡略な解説も、編集委員から米沢嘉博さんが
外れたと同時にこの2年間掲載されておりません。
ネット上の事典に掲載されていたとしてもネット環境を
永続的に確保できなければどうやって確認すれば良いので
しょう？小学館発行『知恵蔵』を見た所でコミックマーケットの
解説文中に『人気マンガの設定を借りたやおいと呼ばれる
パロディー』*4と触れられているに過ぎません。
筆者の手元で確認出来る『現代用語の基礎知識』以外に
やおいが解説してある公的と言える活字媒体といえば、
『若者ことば辞典』か『平成・新語×流行語小辞典 (講談社現代新書 (1449))』
程度のものです。
そう言う現状を確認すればこそ、マンガ評論家としての
伊藤さんがやおいとは、腐女子とはと知りたがったお気持ちも
理解は出来ます。
とりあえず使われている言葉*5を整理し、共通語化する
作業を進めながら、ゆっくりと話を詰めていくより他に
手立てはありますまい。
*2:id:XQO:20040818#1092821649で提示した説が現在最有力です。それから派生したのが『キャプテン翼』同人誌発祥説です→詳細は『DEEP』創刊号［ミリオン出版・大洋図書/93.9.10刊行］収録座談会【パネルディスカッション】「世界の中心で純愛を叫んだ少女達」（パネラー：小谷真理・野阿梓・染谷有紀・ひかわ玲子・山藍紫姫子）【92年8月開催日本SF大会「やおいミュージアム」より一部再録】→野阿梓ホームページ中 http://homepage3.nifty.com/Noah/yaoi_pd.htm にも再録。そして手塚治虫さんが『初級マンガ講座』なる本の文中で提唱した、と言う説があります。手塚治虫提唱説については該当する書籍の存在が架空の物であるらしいので、都市伝説の類ではないかと思われます。手塚治虫氏が著した類書『別巻3 手塚治虫のまんが専科 (手塚治虫漫画全集)』も確認致しましたが、やおいと言う言葉の実在は確認できませんでした。
*3:筆者発行メールマガジン参照 http://kamakura.cool.ne.jp/xqo/bn/yz001_040110.html この例でさえ、恐らく現在微妙に変動しつつあるのでしょう。
*4:2003年版及び2004年版。文化芸術→マンガの中の一項目として解説されています。マンガ分野監修は村上知彦さんです。
