腐女子言端の内と外

腐女子腐男子関連彼是

存在するのにしないもの

手元に歴とした商業出版による一冊のアンソロジー
あります。やおいものではなくて、普通の同人誌を採録
した内容の様です。ジャンルの明記はされていませんが、
表紙を見たら確実にどのジャンルのものかは判るでしょう。
内容を読めば更に確信が持てます。
やおいを扱わない「健全」な内容ならば、大手をふって
ジャンル名を名乗れば良いじゃないか?と思われる方も
いるでしょう。
でも世の中には、どの様な形であれ自分の作品をパロディーに
されて愛されたくないと強硬に主張される原作者さんもいらっしゃる
のですよ。それもただ苦虫を潰しているばかりでなく、下々の
動向にしっかり目を光らせて、落ち度があらば即雷を落とそうと
手薬煉引いておられる方が。
矢野顕子さんの歌ではありませんが、愛があれば全てが
許される訳でもないのですよ。
言い訳を施してまで存在するアンソロジー…それを純粋に
愛の結晶と言い切る自信は、筆者にはありません。
収録作品に愛を感じるだけに。
bk1にもamazonにも取り扱いが無いと言うのも、ね(苦笑)

神様との距離

筆者はとりあえずネット上で同人活動めいた事を致しており、
元々はミステリ小説のパロディーを綴ると言う活動を展開して
いた*1訳ですが、原著者様との距離感はきちんととって
置きたいと思っております。敬愛の念を忘れない事は勿論ですが。
この距離感について、京極夏彦さんが興味深い発言をなさって
おられました。
妖怪馬鹿―化け物を語り尽せり京の夜 (新潮OH!文庫)」357頁:第7章【アクメ君】の
冒頭部分にて語られております。隔靴掻痒の感はありますが、
機会あらば本に直接当たって戴いてその発言を読み、考えて
戴ければ幸いです。京極さんらしい*2と言えばらしい発言ですので。
商業出版による同人誌アンソロジーの存在を否定するつもりは
ありません。むしろ内側の人間としては肯定したいのです。
只、出版されるからには良心と愛が欲しいだけです。

妖怪馬鹿(新潮OH!文庫)
京極夏彦著・多田克己著・村上健司著

出版社 新潮社
発売日 2001.02
価格  ¥ 730(¥ 695)
ISBN  410290073X

bk1で詳しく見る オンライン書店bk1

*1:二次創作自体停滞はしていますが、愛は存在しています。

*2:あくまでも公の場で見る京極さんから受けるイメージです。文士劇ぼくらの愛した二十面相―文士劇全記録】の演技等を拝見すると多少混乱はしますが。

神様との距離・補足

隔靴掻痒極まりないので、京極さんの発言要旨を補足して
おきます。その上で原典を確認して戴ければ有り難く。

  • 同人の範疇であれば(京極さん自身は)容認。
  • 原著者と同人側は接触するべからず。
  • 原著者は見て見ぬ振り、同人側は日陰の身を自覚。

上記はあくまでも筆者による要約です。
これがスタンダードな考え方に成り得るかどうかは判り
ませんが、同人誌に携わる人にとって心得ておくべき点で
あろうとは思われます。
ちなみに、やおいに関しても特に京極さんは禁止令を
出されては居りません。上記要綱に引っかかった場合は
どうか分かりませんが。

妄想は物陰で

悪魔の爪に囚われて(花丸ノベルズ〈ワイド版〉)
永井豪原作・諏訪山ミチル小説

出版社 白泉社
発売日 2004.06
価格  ¥ 840(¥ 800)
ISBN  4592868005

bk1で詳しく見る オンライン書店bk1
悪魔の爪に囚われて キューティーハニーBOYS (花丸ノベルズ)」、一読致しました。
何が惜しいかと言って、主人公が只の可愛らしい男の子にしか
見えないというのが惜しいです。キューティー・ハニーという
作品の面白味はお色気由来の部分もあるんでしょうけど、
可愛らしい主人公が多羅尾伴内*1ノリで快刀乱麻して行くと言う所に
あったのではありますまいか。
これ、もしも実写化若しくはアニメ化するとなったら変身シーンが
大変でしょうね。修正や隠す以前の問題として、いかに美しい
裸体を魅せるかと言う事で。
ミケランジェロダビデ*2風(ではなくて、ドナテッロのダビデ*3風の
美しさを醸し出さないと多分納得して貰えないでしょうから*4
この続きは又少し後から書きます。

*1:七つの顔を持つ名探偵。

*2:アカデミア美術館[イタリア]所蔵 http://www.sbas.firenze.it/accademia/acccol06.htm

*3:着衣と裸体の2種あるが、ここでは一般的に知られる裸体のものを指す。バルジェッロ国立美術館[イタリア]所蔵 http://www.thais.it/scultura/image/sch00009.htm

*4:着衣のダビデ像で、と言う事ならばヴェロッキオ作のものも良いでしょうね。 http://www.thais.it/scultura/image/sch00010.htm バルジェッロ国立美術館[イタリア]所蔵。

妄想は物陰で・2

鑑みると「悪魔の爪に囚われて キューティーハニーBOYS (花丸ノベルズ)」の存在は、
永井豪さん関連の作品の中では少数派ではあれ異色ではないのですね。
他者によるリメイクにボーイズラブ風味を加えたものと言う事で
あれば風我明さん作画による「真・魔王ダンテ*1という存在が
ありますし、ご本人も「デビルマン」でそれらしい気分*2は描き出して
おられますし、「マジンサーガ*3に於いてはワンシーンですが
「デューク・フリード*4に抱かれて頬を染める兜甲児」という
非常に妄想溢れる描写をされております。
悪魔の爪に囚われて キューティーハニーBOYS (花丸ノベルズ)」と言うのは、
公認のやおいと考えて良いんでしょうね。
こう言うケースは極々稀なのでしょう。たまたま永井さんの
中にやおいBLショタを解する気分があったから成功した試みでは
ないかと愚考します。別冊JUNEのショタコン特集号*5が出た時にも
永井さんのインタビュー記事が掲載*6されていましたしね。
それが喜ばしい事かどうかは、事態を受け止める人によって
様々でしょうけれども。

パロディーと補完

トラックバックを戴きましたid:usacoKさんのid:usacoK:20040812を
読み、サムライトルーパーの同人が盛んなりし頃、読み齧った言葉
(の概略)を思い出しました。
『TV放映では描かれなかった(サムライトルーパーの主人公達の)
日常が数多く発行されている同人誌に描かれ、補完されている』
云々という概要であったと思います。
初出誌が何であったか記憶していないのが歯痒いのですが
(捏造された記憶でない事を祈るばかりです)。
ただ読者視聴者という立場であるならば、そう言う補完方法も
あるのかと受け止めれば良いのかも知れません。
筆者もそう言う補完を試みてきた一人ではありますし。
が、それはあくまでも読者視聴者による個人的な補完であって、
原著作者による補完つまり続編或いは外伝作成ではないのですね。
読み手側の補完と創作者による補完を一緒に考えてはいけません。
読者の数だけ外伝があるという状況をお楽しみに
なりたいのであれば止め立てはしませんが。